連休2日目は、杉並区、本應寺で開かれた「木削り教室」に家族で参加してきた。
私たちが入っていくと、たたみの部屋にすでに何人かの参加者の方が座って木を削り始めている。
笑顔で迎えてくれた
滝本ヨウさんはまず、息子と握手。
それから、何種類も並べられた木片の中から「自分の木」を見つけるようにと促してくれた。
まず大切なのは、本当に気に入った木を削ること…。
「木彫りと木削りは違うの。木彫りは作り手が主人公。でも木削りは木と友達になって木とお話しながら削っていくの。」
ヨウさんは言う。
「こう作ろうとかこういう形にしようとか頭で考えずに、木の声を聞きながら、木が削って欲しいという方向へ削っていってね。気持ちよく削っていくと自分の素敵な気持ちが木に入ってくる。そうすると仕上がったときに感動するんだよね」
最初はあぶなっかしい手つきで削っている息子が気になって集中できなかったが(なんせカッターナイフでさえまともに使わせたことがないのにいきなり切り出しナイフ!)、しばらく削っているうちに慣れてきたようで無言で削っている。
それで私もようやく「自分のお友達」と向き合うことができるようになった。
自分が作るんじゃなくて作らせてもらう…。
ヨウさんはみんなに語りかける。
「頭で考えるんじゃなくてね、心で感じながら削るんだよ」
この感じ、なにかに似ているな…とぼんやり思っていたら…
あ、エサレンだった。
「こうしよう」とか「ああしよう」とか考えず、木の存在そのものに寄り添いながら無心に削っていく作業…
落ち着く。
自分の中が静かになっていくのを感じる。
ヘタな自己流の瞑想よりいいな、と思いながら削り続けた。
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成瀬さんの紹介で滝本ヨウさんに初めてお会いしたのは、わずか一週間前、
「スローボディのススメ」の日。
ワークショップが終わってほっとひといき入れているところに遊びに来て下さった。
フロアに座るなり、ヨウさんはおもむろに布をひろげてその上で木を削り始めた。
そのあまりに自然な動作に
「ああ、もうこの人にとって木を削ることって呼吸と一緒なんだな」と思った。
うつむいて削っているが、話の中である瞬間すっと相手の方を見る。とてもまっすぐに。そしてじっと耳を傾ける。また、まなざしを木に戻す…。
こんなにまっすぐ人を見つめる人に出会ったのは久しぶりだった。
「考えがとまらないんです。セッションの時以外はいつもぐるぐるとなにかを考えてしまって、頭が休まらないんです。脳がやすまらないと言うか…」
そんなことをぽつんと話した私に、ヨウさんはまたまっすぐに私の目を見て
「なにか無心になれるものをみつけることだね。はまれるものね。」と静かに話してくれた。
ヨウさんは、決して多くを語る人ではない。
でも言葉一つ一つから誠実さや真剣さが伝わってきて、それが押しつけがましくなく、まさにご自身が木削りみたいな人。
木削りを始められたのは10年以上前のことだそうだ。
仕事のストレスで不眠症になったとき、お友達がクリスマスプレゼントに贈ってくれた1本の切り出しナイフ。
それが故郷、熊野の自然の中で過ごした少年時代をよみがえらせ、木削りの世界に入ったと話して下さった。
いまでは、木削りのすばらしさを伝えるために日本各地だけでなくアメリカでも教室を開いている。
木を削る姿があまりにも自然でかっこよく感じ、思わず写真を撮らせていただいた。「写真、ブログに載せてもいいですか?」と聞いたらやはりまっすぐ私の目をみて「いいよ」とにっこり。スペースUにて。
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3時間近く削り続けて、最後はサンドペーパーで念入りに磨き、蜜蝋を塗って仕上げる。
参加者がそれぞれ作品名をつけ、作品を回しっこしてその感触を味わった。
どうなることかと最初は冷や冷やした息子は、ヨウさんに手伝ってもらいながらいつのまにかかわいらしい卵を作っていた。
私と夫は、同じ種類の木を使ったのにぜんぜん違う形になり、これもまた個性が出てそれぞれ満足。
帰りがけに木削り教室のスケジュール表をいただいたら、
本当に日本のあちこちで教えていらっしゃるようで、もう来月には渡米されてそのまま夏までアメリカ滞在とのお話だった。
今日もどこかでヨウさんがこりこりと木を削っている。
そう考えただけでなんだか胸が温かくなる。
木削り教室に参加した日の夜はセッションだった。
傍らに今日の作品をお守りのように置いてみた。
滝本ヨウさんのホームページ「ふるさと工房HOME 木削り教室」
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